小話

 「二年男子は豊作」とはよく言われたものであって、おおいなる優越感と、そして少々の苦笑を覚える。「豊作」の一員としてカウントされるのは素直に喜ばしいことであるが、主に「豊作」を代表する人物として己は挙げられない筈だからだ。グレイ、ムジカ、ジェラール…と連なるそうそうたる面々に馴染むことは、(顔面偏差値的な問題で)非常にむつかしい。
 と思っていたのであるが。
 「二年男子は豊作」のフレーズは、確かに彼らに重きが置かれているものの、全体の平均値を語るうえでも作用していたらしい。造形が突出している生徒数人と、その他のまぁそこそこのイケメン達。それが俺達、2年男子を巧みに物語っていた。

 2年男子が豊作というのなら、今年は1年女子が豊作だよなァと頬杖をつきながらぼんやりと思った。音楽室の窓辺からは睡魔を誘うにうってつけの陽光と、グラウンドからの喚声が差し込んでくる。
 文化祭を控えたこの時期は、既に終日「特別授業」と名指されている。なに、単なる準備期間だった。クラスの出し物や、部活の露店で大抵の生徒は駆り出されているが、